イランの異邦人

イラン、ペルシャ絨毯に興味のない人にとっては何のイメージも湧かない国の一つではないかと思います。

また、ペルシャ帝国とかイスラム教とかの言葉から断片的な印象を持っている程度ではないかと思います。しかし、一度訪れてみると、日本とは全てにおいて事なった風土に強烈な印象を受けると思います。国土面積一つをとっても日本の4.4倍。

その国土の大半が草一本も生えない不毛の荒野や砂漠であること。首都テヘランは人口1000万人もの大都会であること。テヘランは平均1000メートルの高地にある為、冬は雪も降ること。

ブタを食べない事はよく知られているが、犬まで不浄な動物と思われていることなど数え上げれば切りの無いほど異なった文化を持っている国です。そして最も優れた文化の一つと言えるのが手作りの絨毯です。ペルシャ絨毯を頂点に、各部族の作るトライバルラグ、キリム、ギャッベなどイラン全土で作られ続けています。

美術品、芸術品の域に達しているペルシャ絨毯は知らない人がいない位、世界に広まっていますがギャッベとかキリムになるとまだまだ知っている人が限られています。

遊牧民族が遊牧生活の必需品として代々伝えてきた毛足の長い手結びの絨毯、それがギャッベです。最近その素朴で草木染め自然感あふれる特徴に惹かれる人が急増してきています。

もともと「目が粗い」という意味でギャッベといわれた遊牧民の手結び絨毯、世界的に人気が高まるにつれ高品質でしゃれたデザインのギャッベも見かける事が多くなってきています。

 

東北イラン

ペルシャ絨毯のファンにとって、イラン山脈の東に当たるエリアは、一度は行ってみたい永遠の憧れの地です。アフガニスタン、トルクメニスタンと国境を接する地帯は古来より様々な遊牧民の行き交う場所として、またシルクロードの重要な中継基地として賑わっていました。その中心で絨毯の集積地となったのはホラサーン地方でした。今はイラン東部の州の名前となっているホラサーン、昔はアフガニスタンにあったといわれ、トライバルラグ(部族の絨毯)のメッカでした。ホラサーンの州都であるマシュハドは「太陽の昇る所」を意味しており、現在も渋い色調の堅牢なペルシャ絨毯を生産している。

東北エリアの風土は大変厳しく、雨量が極端に少ない為、緑地が殆どなく砂漠や荒野が延々と広がっている地帯です。おなじ遊牧民族であっても、イランの北部のザクロス山脈を中心に遊牧を繰り返しているカシュガイ族やルリ族などとは、全くと言っていいほど色彩の異なる手作りのトライバルラグ(ギャッベやキリムなの部族独特の絨毯)を生み出しています。草木染めの材料も限られている為マシュハドのペルシャ絨毯と同様にシンプルなギャッベやキリムが伝統的に作られています。ギャッベやキリム等の染色は基本的に自然100%、特にその土地で採れる草木染が中心となっており、独特な深い赤、渋い茶、などが見事に組み合わされたキリムは必見です。

ここをバイクで旅した日本人の人がいました「生きると言う事の意味をしみじみと考えさせてくれるのが、この風土の最大の魅力」、その言葉を思い出させてくれます。

 

遊牧の世界

遊牧民が注目されている事のおおきな理由の一つに、それぞれの遊牧民族が伝承してきた個性あふれる織物があります。

現在のイラン各地には伝統と格式を誇る有名なペルシャ絨毯の産地があります。

超有名産地としてウールではタブリーズ、ナイン、イスファハン、ケルマンなどシルクではクム、カシャン、ザンジャン等が挙げられます。

それに反してギャッベやキリムなどに代表されるトライバルラグ(部族の絨毯と言う意味)はイラン西部に横たわるザクロス山脈を中心に移動する遊牧民族や東部の山脈地帯の遊牧民族によって主に作られています。

ペルシャ絨毯はもともと王族や富裕層の持ちものとしての歴史を持っており、

遊牧民族自身が使用する為に作っていたギャッベやキリム等のトライバルラグとは一線を画していました。

彼らの作る織物は実に多彩で一つとして同じものがありません。正にオンリーワンの魅力があります。

遊牧生活の必要性から生まれてきたものだけに実用性に富んでいます。

移動の為に折り畳める、軽い、丈夫である、雨風を防ぎ生活に彩りを与える。

現代人のライフスタイルのエコやロハスにつながる要素を持っています。

もともとは販売目的で作成されてきたものでない為、民族ごとに個性があり希少性がある。

現在イラン政府が遊牧民族の定住政策を進めている事もあり、その傾向が今後も広がってゆくと思われる。

代表的な遊牧民族として近年ギャッベで有名になって来ているカシュガイ族、同じザクロス山脈エリアにいるルリ族やバフティヤリ族、イラン北部の大部族クルド、シャーセバン族、

イラン東部エリアにはトルクメン族やバル―チ族など、イラン南部にはアフシャール族などが要る